歯周病治療が間に合わず、残念ながら歯が抜けてしまった場合、患者さんの選択肢にはブリッジや部分入れ歯もあります。でもどちらの場合も、抜けた歯の左右の歯に負担がかかるので、どんどん悪くなる歯が増えていってしまいます。しかも、咬合をおろそかにして「とにかく歯抜けでなくなればいい」という安易な考えの歯科医も少なくありません。
歯の一番大切な役割は、噛み合わせです。
私は、隣り合った歯に負担をかけず、天然の歯を削る必要のない、それ単体で歯として機能するインプラントを入れる選択が、他の歯をできるだけ多く残すための最善の「予防」だと考えています。また、インプラントは適切な咬合バランスをとることもでき、食べ物を食べるときの違和感もなく、天然歯に劣らない機能をあわせ持った治療でもあります。
(アメリカやヨーロッパでは、「入れ歯は健康な他の歯をダメにしてしまう」ために、敬遠されていて、インプラントがスタンダードな治療法となっています。)
最近、インプラントを取り入れる歯科医院が増えてきました。
簡単な講習を受けただけでインプラントを始めてしまい、年に数回しかインプラント手術を経験していないような、技術が未熟な医院もたくさんあります。「インプラント年間数百本!」という歯科医院でも、本当は残せる歯を抜いてしまい、インプラントを埋めてしまっている医院もあります。
どうしてみんな、こぞってインプラントを始めるのか?
正直に暴露しましょう。インプラントが、歯科医院が生き残るための成功モデルとされているからです。
先ほども書いたとおり、インプラントは、歯が抜けてしまった場合の最善の予防方法です。
ですから私も、インプラント治療をしています。
ただし、インプラントには診断力と高い技術力が必要です。世界では、インプラントの新しい、より安全な手法や技術がどんどん開発されていて、私も年に数回、最先端のインプラント技術を習得するために、アメリカに渡っています。新しい知識を得れば得るほど、古いやり方のままでインプラントをしている歯科医の平然とした態度が、信じられなくなります。
どうして、CTも見ずに診断できるのか?
どうして、正しい滅菌もせずに手術ができるのか?
どうして、患者さんに既往症の確認をしないのか?
どうして、患者さんに「絶対に良くなる」なんて言えるのか?
どうして、そんなに安くできるのか?
安かろう悪かろうは、結局高くつく!のです。それも、お金だけの問題ではありません。あなた自身が背負ってしまう不自由さとか不快さ、痛みはだれも代わってくれません。
ちょっとインターネットで調べてみてください。インプラントにまつわる事故や訴訟問題は枚挙に暇がないほど出てきます。いかに「インプラントは儲かるから」という動機で、多くの歯医者がインプラントを喧伝し、いい加減な施術をしているかは歴然とするはずです。
私は、同業の一部の歯科医に不信感があります。
(少数であると信じたいですが)そんな自己利益を優先させるような歯科医にかかっている患者さんを不幸に思い、また、同じ医療者として申し訳なくも思っています。
私は、私が信じた道を歩くしかありません。
インプラントは、手術を伴う特殊な治療です。もちろん外科手術レベルの滅菌処置をしますし、インプラントが患者さんに合わないと判断したときや、患者さんに危険や不利益があると分かったら、インプラントをすすめませんし、やめる勇気も持っています。
少ないながらも、私と同じような考えの歯科医も確かにいます。
後続の歯科医たちが今の悪しき習慣を捨てて、患者さん第一で考えて治療をすること自体が、自分の幸せなんだと気付いてくれるように、歯科医に対しても、私の生き様で伝えていきたいと思っています。
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